H-IIAロケット高度化、そもそもとこれから

2015年11月24日、H-IIAロケット29号機が打ち上げに成功した。日本初の、民間静止通信衛星をロケットで打ち上げる商業サービスの成功だ。既に多くの報道がされているし、その特徴である「H-IIAロケット高度化」などについては以下の2つのニュース記事が詳しく、わかりやすい。

(外部リンク)世界よ、これが「高度化」だ – 今度のH-IIAロケットは一味違う

(外部リンク)H-IIA、悲願の静止衛星商業打ち上げに成功 本格参入までまだまだ続く、曲がりくねった長い道

国産ジェット旅客機MRJの初飛行に続いて、三菱重工業を中心とした日本の航空宇宙産業が世界に打って出るという明るいニュースになったわけだが、このH-IIAロケット高度化とはどんなものなのか、少し違った視点から見てみよう。

30機の予約キャンセルから始まったH-IIAロケット

開発時のH-IIAロケット想像図。明るい未来が約束されていたはずだった。

開発時のH-IIAロケット想像図。明るい未来が約束されていたはずだった。(C) JAXA

H-IIAロケットは開発開始直後の1996年に、30機の民間静止通信衛星打ち上げを受注していた。なんと、これまでに打ち上げたH-IIAロケットとほぼ同じ数の打ち上げ契約をしていたのである。しかし、先代のH-IIロケットが1998年と1999年に相次いで打ち上げに失敗。信頼性が疑われたことと、影響でH-IIAロケットの開発が遅れたこともあって、契約をすべてキャンセルされてしまった。ロケット打ち上げをとりまとめるために設立されたロケットシステム社も解散に追い込まれたため、2007年からはH-IIAロケットの主要メーカーである、三菱重工業がロケット打ち上げビジネスも担うことになった。

しかしロケットシステム時代から数えて約15年間も、静止通信衛星の受注ができなかったのには技術的な理由があった。先に挙げた記事で詳しく解説されていた「高度化」が必要だったのだ。高度化の詳細な解説はこれらの記事を参照して頂くとして、不思議には思われないだろうか。なぜH-IIAロケットは高度化する前に、30機もの衛星打ち上げを受注できていたのだろうか。よく説明されるような「高度化で衛星の寿命が延びる」ということであれば、以前にもその点は問題だったはずだ。

実は、この「衛星の寿命が延びる」というのは説明を簡単にするための、ちょっと誤魔化した説明なのだ。

H-IIAロケット高度化は「ダンクシュート」

H-IIAロケットの飛行経路。静止軌道に斜め30度の角度で到着(緑線)したあと、ロケットが20度(赤線)に直す。

H-IIAロケットの飛行経路。静止軌道に斜め30度の角度で到着(緑線)したあと、ロケットが20度(赤線)に直す。(c)JAXA

静止軌道は、赤道上空36000kmを回る円軌道だ。この高さだと、人工衛星は地球1周にちょうど1日を要するので、地球の自転と一緒に回ることになり、地上からは止まって見えるわけだ。

ロケットで静止衛星を打ち上げるのは、バスケットボールのシュートに似ている。ロケットは地球に近い場所(と言っても地上からは100km以上の高さだが)で衛星を加速して分離し、高度36000kmまで「投げ上げる」。衛星はロケットから切り離された状態でボールのように飛んで行き、高度36000kmに達したら自分のエンジンで静止軌道に乗る。打ち上げロケットは、衛星を静止軌道まで運んであげるわけではないのだ。

ロケットが打ち上げられる場所によって、衛星が飛んで行く「向き」が変わる。赤道上のどこかから打ち上げられたロケットの場合、そのまま飛んで行けば衛星は赤道と平行に飛び、まっすぐに静止軌道に届く。しかし、赤道以外の場所から打ち上げた場合、ロケットは赤道に対して斜めに飛んで行くため、静止軌道に到着したときも斜めに飛んできてしまう。種子島の北緯は30度なので、約30度の角度で到着してしまうことになる。

そこで、H-IIAロケット高度化では、ロケット自身が衛星と一緒に高度36000kmまで飛んで行き、そこで衛星の向きを変えることにした。今までのロケットが床からボールを投げるシュートだとすれば、高度化したH-IIAは自分がジャンプしてゴールまで行き、そこで真正面からボールを投げ込む「ダンクシュート」だと思えばいい。

ロケット自身が高度36000kmまで行かなければならないので、ジャンプ力を鍛えなければならない。通常、H-IIAロケットで静止衛星を打ち上げる際には、離陸に必要な固体ロケットブースター(SRB-A)を2本使用するが、今回の29号機は4本に増強した。ダンクシュートに必要なジャンプ力というわけだ。

※ものすごく雑な説明だが、イメージしやすくするために思い切り簡略化しているのでご容赦願いたい。

今までは衛星の側で対応できていた

気象衛星ひまわり8号は、高度化ではないH-IIAロケットで打ち上げられた。(気象庁HPより)

気象衛星ひまわり8号は、高度化ではないH-IIAロケットで打ち上げられた。(気象庁HPより)

では、今までの高度化前のH-IIAロケットではどうしていたのだろうか。例えば、現在使われている気象衛星「ひまわり8号」を打ち上げたH-IIAロケット25号機は高度化型ではない。しかし、ひまわり8号の寿命が短いという話は聞かない。これは、ひまわり8号は最初からH-IIAロケットで打ち上げることが決まっていたので、「静止軌道に斜めに届く」ことを想定して設計されているからだ。

高度36000kmに到達した衛星は、自分のエンジンで静止軌道に乗り換える。このとき、まっすぐに到達した場合と斜めに到達した場合では、斜めの方が多くの燃料を使う。このため、斜めに到達する従来のH-IIAロケットでは衛星が多くの燃料を使ってしまうことになり「寿命が短くなる」と説明されることが多いのだが、ひまわり8号のようにあらかじめ多めに燃料を積んでおけば寿命が短くなることはない。その意味で「高度化しないと衛星の寿命が短くなる」というのは正しくない。

かつてH-IIAロケットが受注していた打ち上げ契約は、30機のうち20機がヒューズ社で、10機はスペースシステムズ・ロラール社。どちらも衛星メーカーだ。つまり、これらのメーカーはH-IIAロケットの「斜め打ち上げ」に対応した衛星を製造するつもりだったから、何の問題もなかったというわけだ

静止衛星打ち上げ市場の激変

最も多く使われるロケット、アリアン5

最も多く使われるロケット、アリアン5 (c)JAXA/ESA/S.Corvaja

しかし、そもそもどうしてそんなにたくさんの打ち上げを予約していたのか。それは、ロケットの打ち上げを予約しておかないと衛星が売れないからだ。衛星を製造しても、打ち上げてくれるロケットがなければ使えない。そこで衛星メーカーは、かなり先までロケットを予約しておかなければならなかった。しかも、1機種のロケットだけを予約していたら、そのロケットにトラブルがあったら全部の衛星が止まってしまう。当時圧倒的シェアだったアリアンロケットが止まっても打ち上げを続けられるよう、H-IIAロケットに白羽の矢が立ったのだった。

しかしその後、ロケット打ち上げ市場は激変する。まず、通信衛星の数そのものが伸び悩んだ。地上や海底の光ケーブルがどんどん高速化し、インターネットが普及したことで、衛星通信は災害対応や、海上や途上国など地上回線に頼れない通信を中心に使われるようになった。また、衛星の改良で寿命が延びて取り換え需要が減った。このため、21世紀に入っても通信衛星の打ち上げ数はあまり増えなかった。

一方で、ロケットの供給は増えた。アリアンロケットは、通信衛星1機を打ち上げるアリアン4から、2機を同時に打ち上げるアリアン5に移行した。さらにロシアのプロトン、ウクライナのゼニートなど旧ソ連系のロケットがアメリカ企業と組んで参入してくると、ロケット打ち上げは予約を押さえておかなくてもよくなってきた。むしろ、打ち上げのたびに価格競争した方が安い。

こうなると、衛星メーカーはどんどん衛星を作り、打ち上げロケットはその都度選ぶということになる。そして、衛星は最も多く打ち上げるアリアンロケットに合わせて設計される。こうなると、H-IIAロケットでアリアン用の「まっすぐ打ち上げ衛星」を打ち上げると燃料消費が多くなり寿命が短くなったり、そもそも打ち上げられないという問題が起きてしまったのだ。

実は無駄が多いダンクシュート

H-IIAロケットは高度化による「ダンクシュート」を可能にしたことで再度の受注に成功したわけだが、そもそもこの方法は無駄が多い。衛星だけでなくロケットも高度36000kmまで行って加速しなければならないから、無駄なエネルギーを使うのだ。

SRB-Aを2本使うH-IIA202型の場合、ひまわり8号のような従来通りの打ち上げ方法なら最大4.0tの衛星を運ぶことができるが、高度化による「ダンクシュート」の場合、2.9tの衛星しか載せられない。そこでSRB-Aを4本使うH-IIA204型にすると、「ダンクシュート」でも4.6t以上の衛星を運ぶことができるのだが、ざっくり言って、204型を使って202型相当の衛星しか運べないということになる。

今回の打ち上げは商業契約のため価格非公開だが、過去の政府打ち上げの費用を見ると、202型は100億円程度、204型は120億円程度。衛星の都合に合わせるために20億円も余計に掛かっている。また、従来の打ち上げ方法なら204型だと6.0tもの衛星を打ち上げられるため、大型化にも対応できる。

このように「ダンクシュート」は無駄が多いので、2016年に打ち上げ予定の気象衛星「ひまわり9号」も、従来通りの打ち上げ方法を使って202型で対応する。その方が安いからだ。

ロケットの「デファクトスタンダード」が変わる?

アリアンロケットに合わせて作られた衛星を打ち上げるため、かなり無理をして打ち上げているH-IIA高度化だが、もしかすると今後は状況が変わるかもしれない。それは、アメリカのスペースX社の急伸が理由だ。

スペースX社のファルコン9ロケット。さらなるコストダウンを狙って、着陸実験も行っている最新型。

スペースX社のファルコン9ロケット。さらなるコストダウンを狙って、着陸実験も行っている最新型。(c)SPACE X

スペースX社は新興の民間企業だが、独自に開発したファルコン9ロケットは1機70億円程度と、100億円のH-IIAよりかなり安い。そして、打ち上げられるフロリダの緯度は種子島とほぼ同じ、28度。ということは、ファルコン9も「斜め打ち上げ衛星」の方が都合がいいのだ。このため、衛星メーカーはファルコン9対応の衛星も製造するようになってきている。

よく考えてみると、赤道上にあるロケット発射場は、南米ギアナにあるアリアンスペースの発射場だけだ。日米のほか、ロシアや中国も赤道上からは打ち上げない。赤道からの「まっすぐ打ち上げ」はアリアンスペースだけの特別仕様で、むしろ世界で一般的なのは斜め打ち上げなのだ。そうなるとこれからは衛星メーカーも、斜め打ち上げに柔軟に対応できる衛星を作った方が安いロケットを選べる、ということになってしまい、アリアンスペースの優位性が失われる可能性すらある。

スペースX vs アリアンスペースの波に乗れるか

H-IIAロケットに替わって2020年から打ち上げられるH3ロケットは、SRBの本数を変えることで2t台、4t台、6t台程度の静止衛星を打ち上げられるロケットになる予定だ。もちろんH3ロケットはH-IIA高度化相当の機能を持っているので、この打ち上げ能力は「ダンクシュート方式」のときの数字。「斜め方式」のときは、もっと重い衛星を載せられるかもしれない。

アリアンスペースも次世代ロケット、アリアン6を開発中だが、こちらは赤道上から打ち上げるのでまっすぐ方式しかあり得ない。もともと最も効率が良い打ち上げ方式なので、逆に言うと伸びしろがない。

H3ロケットは最小構成で50億円程度を予定しているが、ファルコン9もさらに価格を下げる改良をすると予想されるので、スペースXにどのくらい対抗できるかはわからない。首位アリアンスペース vs 挑戦者スペースXというのが一般的な見方で、H3がそこにどれだけ食い込めるかという状況になるだろう。ただ、「発射場が北緯30度」というスペースXとH3の共通点が、スペースX仕様の衛星はH3にも適しているという意外なメリットをもたらしてくれるかもしれないのだ。

高度化には別の使いみちも

H-IIAロケット高度化プロジェクトのマーク。描かれているのは地球を脱出する「はやぶさ2」だ。

H-IIAロケット高度化プロジェクトのマーク。描かれているのは地球を脱出する「はやぶさ2」だ。 (c)JAXA

こうなると、せっかく開発した高度化も無駄になってしまうように見えるかもしれないが、そういうわけではない。他にも使いみちがあるのだ。

H-IIAロケット高度化の初打ち上げは、今回の29号機ではなく、小惑星探査機「はやぶさ2」を載せた26号機だった。地球を脱出するはやぶさ2の場合、「種子島から打ち上げるベストタイミング」と「地球を脱出するベストタイミング」が必ずしも一致しない。自転している地球の向きと、目的地の方角の両方を見計らう必要があるからだ。そこで26号機は、打ち上げ後にいったん地球を回る軌道に乗り、2時間後に地球脱出の噴射をした。こういう芸当ができるのも高度化の成果だ。

また、目立たない改良だが、高度化プロジェクトは電子機器の刷新も行っている。たとえば、GPSを使用してロケットの位置を自分で計算することで、地上からロケットの位置を監視するレーダーが不要になるようにしている。レーダーの維持費が不要になり、人手もかからないなど、H3にも引き継がれる重要な技術を一足先に取り入れた。H-IIA高度化プロジェクトはH3ロケットへ向けた「H-IIAロケット最終改良型」とも言えるだろう。

イプシロンロケット、打ち上げ中止より重要な「失敗」

DSC02702日本の新型ロケット、イプシロンロケットの1号機が9月14日に再打ち上げに挑む。8月27日に発生した「居座り」への対応を施したうえでの再チャレンジだ。
イプシロンロケットはメディアで「応援するべき話題」と定義されているようだ。メディアは、叩いていい相手だと決めたらとことん叩くが、応援すべき相手だと決めたら少々の問題は目をつぶってくれる。私は以前、あるメディアの方に「我々が『はやぶさは失敗』と判断すれば、それは失敗なんですよ」と言われたことがある。今回は「失敗ではないと判断することにした」のだろう。宇宙開発の現場にとってはありがたいことではあるが、評価が甘くなるようなことがあればそれはそれで宇宙開発のためにならない。ここは敢えて、厳しい分析をしてみよう。

打ち上げは「中止」
2013年8月27日、イプシロンロケット1号機の打ち上げが、カウントダウン0秒で中止された。実際には19秒前に自動停止しており、そのあとはカウントダウンを読み上げ続けただけなのだが、現地の観覧席や、一部のテレビ局やネットの生中継では、0秒を過ぎても打ち上がらないイプシロンを見て大騒ぎになった。こういった打ち上げ中止は、以前ならメディアで「打ち上げ失敗」と大きく取り上げられたが、今回はそういう見出しはなかったようだ。現地の広報には記者から「これは失敗ですか?」という質問があったが、丁寧な説明に納得したようだ。むしろ失敗ではないということの説明を求めたのだろう。
私は今回、初めてメディアとして打ち上げに臨んだ。そして打ち上げ前日と、当日の記者会見に出席した。森田泰弘プロジェクトマネージャー(プロマネ)は打ち上げ前日、End-To-End試験で通信系のトラブルを発見するなど充分な試験を行っており、自信があると語った。一方、打ち上げ中止後の記者会見では、記者から「打ち上げ中止して、自信はどうなりましたか?」という少し意地悪な質問が出たが、それにも「正常に止めることができた。自信を持っている」と答えた。そんな質問、しなくてもいいのになあと思ったものだが、これが後に意外な形で現れる。

DSC02659IT屋が驚いた、中止理由
打ち上げ中止から3日後の8月30日、原因調査結果の詳細が発表された。その内容はメディアに繰り返し質問されるほどわかりにくいものだった。いや、メディアにとってわかりにくいものだった。わずか0.07秒の信号の遅れで、コンピューターが打ち上げを止めてしまったというのだ。なるほど、宇宙開発とはこれほど精密なものなのか、という感想を持った人も多かったようだ。
ところが、Twitter上で宇宙開発に関心を持つ人達、通称「宇宙クラスタ」の反応は少し違った。宇宙クラスタにはプログラマーやシステムエンジニアなど、IT系の本職を持つ人が多い。彼らには、思い当たる節があったのだ。
0.07秒の問題を日常的な例に喩えると、こういうことになる。AとBの2人が、あらかじめこう決めておく。「AはBに、0時ちょうどに電話をする。Bは、0時に電話がなければトラブルと判断する」と。Aは予定通り、0時ちょうどに電話を掛けた。ところが、発信ボタンを押してからBの電話の着信音が鳴るまでには数秒かかる。これを待たずにBは、電話が掛かってこないからトラブルと判断してしまった。
いや、なんで数秒程度待たなかったの?0時ちょうどって言っても0秒とは言ってないでしょう。普通の人間ならそう考えるだろう。しかし、イプシロンでこの判断をしたのは、コンピューターだ。コンピューターは待ち時間を教えてやらなければ、0.01秒たりとも待ちはしない。人間に言われた通りのことを忠実に実行してしまったのだ。
IT屋にとって、これは常識だ。通信をしている以上、わずかとはいえ時間の遅れは生じる。だから、受信する側は相手の通信が届くのを「待つ」必要がある。ではどのくらい待っても来なかったら異常なのか?その値を設定し忘れればゼロ秒、つまり一切遅れを認めないことになる。ごくありふれた失敗であって、宇宙開発が精密だとかそういうことではないのだ。どうしてそんなことが起きてしまったのか。

大丈夫だと思った
ロケットを発射台に立てた最終リハーサルは、8月20日と21日に予定されていた。地上設備とロケットを本番と同じ状態で接続して行われる最終確認だ。しかし20日は技術的な問題が見つかったため(見つけるためにやっているのだからこれは悪くない)、21日は悪天候のため、リハーサルを完了することができなかった。
リハーサルを再度やり直せば、打ち上げ日自体が遅れてしまう。検討の結果、これまでに実施した試験で問題ないと判断した。しかし、実際に起きたトラブルは、リハーサルを最後まで実施していれば発覚するはずのトラブルだった。日程が詰まっているので、試験未実施でも大丈夫だろうと判断したら、結果的に問題が出てしまったことになる。

1日も早く
さて、私は8月27日の打ち上げ中止後に開かれた奥村直樹JAXA理事長、山本一太宇宙担当大臣、福井照文部科学省副大臣、葛西敬之宇宙政策委員会委員長の会見に出席していたが、私は彼らの発言に違和感を感じていた。奥村理事長が「原因究明が重要」と繰り返したのに対し、他の3人は「1日も早い再打ち上げを」と発言したのだ。原因究明と1日も早い再打ち上げ、どちらも重要ではあるが、どちらが重要かと言えば原因究明だ。
もちろん、打ち上げが1日遅れるごとに経費は余分にかかる。しかし、不自然なほど、判で押したように発言が揃っていた。イプシロンロケットの打ち上げは多方面から期待されている。来年度予算で次期基幹ロケットの開発に着手するためにはイプシロンの成功は強い後押しになるだろう。9月には概算要求の審査が始まる。またイプシロン自体、ベトナムの衛星打ち上げ受注を目指しており、まずは1機成功する必要がある。
イプシロンロケットの開発スケジュールはひっ迫していた。正月も返上して開発作業が進められていた。そんな状況で、最後にソフトウェア開発にしわ寄せが行ったことは想像に難くない。発射場へ運ぶ途中、運送会社の技術的問題で到着が遅れた。さらに、発射場に到着してからのトラブルで、打ち上げ日を22日から27日へ変更した。1号機でトラブルが起きるのは当然であり、それを改修するための日程上の余裕が不足していた。そして、わざわざ打ち上げ日を変更した後も充分な余裕がなく、リハーサルを完全に行えないまま打ち上げ日を迎えた。充分な余裕を現場に与えないプレッシャーがあったのではないか、という想像をしてしまう。

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Mロケットの遺伝子
イプシロンロケットは、7年前に志半ばで打ち切られたM-V(ミューファイブ)ロケットの後継機だ。Mシリーズは東京大学の糸川教授に端を発する純国産固体ロケットだ。NASAからの技術導入で進めてきた現H-IIAロケットのシリーズとの大きな違いのひとつに、属人的な開発手法がある。各部分を教授が個人的に担当していたのだ。このため、大量の書類を作成するNASAの手法と異なり柔軟に技術開発することができ、実際の打ち上げでも「作った○○先生がOKと言えばOK」という、実におおらかでシンプルなスタイルだった。
Mロケット時代は、全ての計器を人が見ていた。その部分を作ったその人が、だ。だから、少しでもおかしいと感じれば止めることができるし、この程度ならおかしくないと思えば進めることができる。たとえば今回のように、データが0.07秒遅れて送信開始された程度なら、人間の目では歯牙にもかけなかっただろう。
しかしコンピューターは、その判断ができない。とにかくプログラムとパラメータの通りに判定してしまう。つまり、人間がどうやってその判断をしているかを全て数値化してセットしなければ、人間と同じ判定結果にはならないのだ。そこを徹底的に作り込みさえすれば、後は人間が介さなくても自動的に動くシステムができる。作り込まなければ異常な動作をする。
「大丈夫だと思った」という判断は、どちらかというとMロケットを思わせる。ロケットそのものは大丈夫だったが、コンピューターが自動的に打ち上げを行うイプシロンロケットでは、ソフトウェアの成熟度が大きなカギを握っていたのに、そこを充分にチェックしきれずに打ち上げに臨んでしまった、そのことが「失敗」だったと、私は思う。

「総点検しろ!」
打ち上げ中止直後、森田プロマネは「問題解決に最低2日はかかるので、打ち上げは最短で3日後」と言った。これは、打ち上げ中止時のデータから原因がすぐにわかり、改修方法の目途がついたからだろう。しかし3日後に改めて行われた記者会見では、「総点検するので打ち上げ時期未定」ということになってしまった。
これは想像だが、恐らくJAXA上層部から待ったがかかったのではないか。単純なミスは誰にでもあることで、巨大なシステムであれば単純ミスも数が多くなるのは当然だ。それをチェックして直しきれなかったということを考えれば、1つの問題を解決してもほかの問題が隠れている可能性を疑わざるを得ない。打ち上げ中止直後には「自信がある」と語った森田プロマネは、「前のめりだった」とトーンを落とした。周囲が諌めたのかもしれない。
しかし、こうも考えられる。政府関係者の「1日も早く再打ち上げを」という声、そして3日で再打ち上げと報じてしまったマスメディアの期待に反してまで、JAXAは総点検を決定した。これは詰まりに詰まった打ち上げ準備日程にあえて余裕を持たせ、一度落ち着いてじっくり考えようと差しのべた救いの手でもあったのではないか。

失敗を糧に
もしロケットの神様がいるとすれば、神様がイプシロン開発チームの失敗に与えたのは罰ではなく、祝福だったのかもしれない。開発チームが仕込んでいた打ち上げ中止シーケンスが正常に作動することで、トラブルは打ち上げ失敗ではなく、打ち上げ中止で収まった。そして、JAXAは組織を挙げて、イプシロンチームを援助した。
M-V廃止以来7年の逆境に耐えて、イプシロンロケットは飛び立とうとしている。それに比べれば今回の状況は、むしろ追い風とすら言えるのではないだろうか。挽回の余地のある失敗は、真の成功へ向けての糧になる。そして糸川教授以来脈々と受け継がれる固体ロケットの遺伝子が、モバイル管制を備えたイプシロンへと新たな進化を遂げることを期待してならない。 DSC02651 (1280x851)

梯子を外された月着陸探査計画

半年振りの更新のあと、1日おきに更新というのも恐縮だが、続けて宇宙政策ネタである。

進まなかったSELENE2計画

月探査機「かぐや」を覚えているだろうか。SELENE計画として開発着手したのは1999年、打ち上げられたのは2007年で、月を周回して世界最先端の観測が行われた後、2009年に月に衝突してミッションを終えた。この計画が始まる前には様々な案が検討されており、その中には月着陸機を搭載する案もあったのだが、これは後継のSELENE2計画に持ち越されることになった。そう考えるとSELENE2計画は、SELENE計画で着陸機が搭載されないと決まった1999年には実質的にスタートしていたと言える。

その一方で、1998年から2000年にかけてH-IIロケット2機とM-Vロケットが立て続けに失敗するなどトラブルが続発し、2003年の宇宙機関統合まで日本の宇宙開発は混乱の時代を迎える。統合後も態勢の立て直しに注力して新規計画の着手は遅延、その隙を突くように情報収集衛星が予算を奪っていく格好になった。着手済みのSELENEの開発は進むが、SELENE2の開発は着手されなかった。

黒船「コンステレーション計画」来航

2004年、アメリカのブッシュ大統領は、2020年までに有人月面探査を再開することを発表。2006年にはコンステレーション計画の名で、月面基地の建設を長期目標とした継続的な有人月往復飛行が具体化された。当時はイラク戦争終結直後であり、新時代の世界秩序を構築する上でアメリカの覇権を宣伝する必要もあったのだろう。コンステレーション計画はまずアメリカのみで完結する計画として提示され、同盟国には「役に立つものを持ってくれば一緒にやってもいいよ」というスタンスだった。

一方日本では、2008年に宇宙基本法が成立。2009年に最初の宇宙基本計画が立案されると、そこにこのように記載された。

有人を視野に入れたロボットによる月探査
月は地球に近い成り立ちを持ち、太陽系の起源と進化の科学的解明に重要であるとともに、資源等の利用可能性についても未解明であり、月を当面の太陽系探査の重要な目標に設定する。我が国が世界をリードして月の起源と進化を解明するとともに、科学的利用や資源利用の可能性を探るため、将来的にはその場での高度な判断などを可能とする月面有人活動も視野に入れた、日本らしい本格的かつ長期的な月探査の検討を進める。
具体的には、長期的にロボットと有人の連携を視野に入れた以下の案を念頭において、我が国の総力を挙げ、1年程度をかけて意義、目標、目指す成果、研究開発項目、技術的ステップ、中長期的スケジュール、資金見積りなどを検討する。なお、我が国独自の目標を保持しつつ、各国の動向も注視し、国際協力の可能性も検討するとともに、実行に当たっては、適切な評価体制の下で推進する。

  • 第1段階(平成32年(2020年)頃)として科学探査拠点構築に向けた準備として、我が国の得意とするロボット技術をいかして、二足歩行ロボット等、高度なロボットによる無人探査の実現を目指す。
  • その次の段階としては、有人対応の科学探査拠点を活用し、人とロボットの連携による本格的な探査への発展を目指す。

少し長いがそのまま引用した。というのも、行数にして国際宇宙ステーションの約3倍も割いているのだ。内容もコンステレーション計画を意識して、アメリカさんに乗せてもらうのではなく、独自の無人探査を行いつつ将来の有人探査に参加するという野心的なものだ。二足歩行ロボットの新しさもあり、大きく報道されたことを記憶している方も多いだろう。

月懇談会の夢のあと

2009年7月から、日本独自の月探査を検討する有識者会議、月懇談会が開始された。折しも8月の総選挙で民主党が歴史的圧勝を収め鳩山由紀夫内閣が成立するが、月懇談会はそのまま実施された。2010年7月までに9回の会合が実施され、報告書が作成される。日本の月探査の第一段階は2015年の無人探査機着陸。これはSELENE2そのものだった。アメリカが2020年に有人探査をするまでに日本は月に複数のロボットを送り込み、無人探査拠点を構築する計画だった。

しかし日本の月探査に大きな影響を与えたのは日本の民主党ではなく、アメリカの民主党だった。2008年12月、バラク・オバマがアメリカ大統領選挙に勝利。翌1月に大統領に就任すると、コンステレーション計画の見直しを指示した。既に様々な問題を抱えていたコンステレーション計画は2010年2月、正式に中止が発表される。月懇談会は開始前から、前提となるコンステレーション計画に黄色信号が点灯、報告書が出来たときにはアメリカ側は撤退していたのである。

報告書は棚に置かれたまま、省みられることはなかった。2015年着陸を目指すはずのSELENE2は、開発着手されなかった。

梯子を外す宇宙政策委員会

2013年1月、宇宙基本計画が改訂された。月探査の記述は以下の通りである。

有人やロボットを活用した宇宙活動の推進により、人類の活動領域を拡大することを目指すこととし、長期的にロボットと有人の連携を視野に入れた、平成32年(2020年)頃のロボット技術をいかした月探査の実現を目指した検討を進める。

月懇談会で決まったはずの2015年の探査はきれいに消え、記述内容も激減した。そしてこの月探査の検討を担当するのが、有人宇宙活動と同じ宇宙科学・探査部会である。

第2回のJAXA資料ではSELENE2がまる2ページを割いて説明している。打上げ目標は2018年。宇宙基本計画に則ったものだ。

第3回のJAXA資料では、具体的な科学ミッションが列挙される。小惑星探査機「はやぶさ2」、X線天文衛星ASTRO-H、ジオスペース探査衛星ERG、彗星探査計画「ベピ・コロンボ」、次世代赤外線天文衛星SPICA、そして月着陸探査ミッション。このときの議事録にはこうある。

 (月着陸探査ミッションについて)
○月探査がここで示されることは奇異に感じる。(松井部会長)
●月探査については、基本計画にも記述はない。(事務局)

これはおかしなことだ。先述の通り、月探査計画は基本計画に明記されている。開発中の探査機ではなく将来構想なのは確かだが、それはSPICAも同じだ。しかしSPICAはそのような言われ方をしていない。

この結果第4回資料ではJAXA案として、SPICAは2014年度開発着手。月着陸探査は「研究を進める」と記載されるに留まった。

前回のブログに掲載した有人宇宙活動と同じく、こちらも関係者、特に大学などの研究者への影響は甚大だ。彼らは1990年代から月探査で何を調査するのか、を研究している。しかし探査機がいつ飛ぶのかは、さしたる意思決定もなしに先延ばしになっている。

日本の宇宙政策はいったいどのような責任を持って検討されているのだろうか。この間、2回の政権交代があったが、それによって政策が変わることも、委員が替わることもなかった。少なくとも政治は何も影響力を及ぼしていないようだが、だとすると誰の意思で動いているのだろうか。

消えた日本の有人宇宙開発

日本の宇宙開発は、内閣総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部が方針を決定する。しかし、政治家が膨大な案を作成することができるわけではないので、事務局である内閣府に宇宙政策委員会が置かれ、ここで案が作成される。つまり実質的にはこの宇宙政策委員会が、日本の宇宙開発の方針を決定しているわけだ。

以下、宇宙政策委員会の資料はこのページから見ることができる。
http://www8.cao.go.jp/space/comittee/kaisai.html

宇宙政策委員会の中間報告

2013年5月30日、内閣府宇宙政策委員会の第15回会合が開かれた。この会合では、各部会から中間報告が提出され、「平成26年度宇宙開発利用に関する戦略的予算配分方針(経費の見積り方針)」が決定された。その名の通り、これから2014年度予算案を作成するために、日本はどんな宇宙開発をするのかをまとめたものだ。その中に、有人宇宙開発については以下のように記されている。

国際宇宙ステーション(ISS)については、費用対効果について常に評価するとともに、経費を削減する。特に、2016年以降は国際パートナーと調整の上、プロジェクト全体の経費削減や運用の効率化、アジア諸国との相互の利益にかなう「きぼう」の利用の推進等の方策により経費の圧縮を図る。

これが全てだ。日本の国家意思として何をしたいのか、何ひとつ書かれていない。単に「あんまりお金を掛けないでね」と言っているに過ぎない。

どんな議論が行われたのか

有人宇宙開発について、各部会ではどんな議論がされたのだろうか。有人宇宙開発を担当している部会は、宇宙輸送システム部会と宇宙科学・探査部会だ。このうち宇宙輸送システム部会は、将来有人宇宙船を開発するかという部分が含まれるわけだが、来年度予算の目玉は次期基幹ロケット、通称H-3の開発着手だ。H-3は有人宇宙船の打上げにも使われる構想だから、まずH-3に注力したのは理解できる。

問題は宇宙科学・探査部会だ。この部会は第1回の資料にこう記している。

部会の検討事項は以下の通りとする。
(1)我が国における学術を目的とする宇宙科学・探査の研究の動向
(2)上記の宇宙科学・探査の推進体制について
(3)多様な目的で実施される我が国宇宙探査の在り方
(4)国際協力を前提として実施される我が国有人宇宙活動の在り方
(5)その他

つまり国際宇宙ステーションをはじめとする有人宇宙活動はこの部会が担当だ。有人宇宙船が必要かどうかも、そもそも有人宇宙活動が決まらなければわからない。

第2回ではJAXA提出資料として、諸外国の有人宇宙開発の動向が挙げられている。これは議論の前提としてJAXAが事実関係をまとめたものだ。

第3回は、部会意見案として以下のように記された。

「将来的に国際協力を前提として実施される有人宇宙活動に対する我が国の対応については、外交・安全保障、産業基盤の維持、産業競争力の強化、科学技術等の様々な面から検討する」こととなっていることから、引き続き、宇宙科学・探査部会で検討を進める。

項目は挙がっているが内容はない。前回の資料を踏まえた整理は行われていない。

第4回でもこの文面は引き継がれ、そのまま部会意見として採用された。このとき、今後数年間の宇宙科学プロジェクトの計画を記したロードマップが作成されたが、この資料では宇宙ステーション関係については触れられていない。まるで宇宙科学・探査部会はISASとJSPEC関連の計画だけを検討する部会であるかのようだ。

この部会意見が第15回宇宙政策委員会に提出され、予算配分方針になったわけだが、何を根拠に「有人宇宙活動にはあまりお金を掛けないでね」という記述になったのか。部会意見は何も言っていないに等しいのに。

無視された宇宙飛行士

さて、予算配分方針決定後の6月11日に開かれた第5回の宇宙科学・探査部会では、各委員からロードマップに対する意見書を提出し、検討を続けることになった。私はこの部会後の記者会見に出席したのだが、そこで驚くべきことが起きた。

松井孝典部会長が、各委員の意見書を順に読み上げた。6人の委員の意見書を要約して読み上げたあと、最後の山崎直子委員の資料を手に取ると「あと、山崎委員からの資料です」と言って、読まずに置いたのだ。これには内閣府の事務方も各社記者も、えっ、と顔を上げた。

私は慌てて資料を見比べた。他の委員が言っておらず、山崎委員だけが触れている話題が、何かあるのではないか?それは容易に見つかった。

多様な政策目的の宇宙探査、有人宇宙活動プログラムに関しても、本部会で議論することとなっており、ロードマップにも将来的にそれらを反映する。その際、国際宇宙探査協働グループ(ISECG)における国際的なロードマップを参考にしていく。但し、本部会における議論がまだ行われていないことから、今後、ヒアリングや議論を十分にした後で策定してはいかがか。

有人宇宙活動について書いているのは山崎委員だけだったのだ。言うまでもなく山崎委員は宇宙飛行士であり、有人宇宙活動の専門家としてこの部会の委員を務めているのだから、有人宇宙活動に言及するのは当然だろう。しかも、これまで部会で全く議論をしていないことを直球で指摘している。これが読まれなかったことは、あまりにも露骨だ。

宇宙科学・探査部会は、有人宇宙活動について議論する気がない。そして宇宙政策委員会は、有人宇宙活動について「あまりお金を掛けないでね」という以上のことを決める気がない。このことがはっきしりた。

日本の有人宇宙活動の中核は国際宇宙ステーションの日本モジュール、「きぼう」だ。現在のところ国際宇宙ステーションは2020年までの運用が決まっている。その後は参加各国の話し合いが続いているが、国際宇宙ステーションは打上げから20年前後が経過し、老朽化が進む。地上施設も同様だ。単純に使い続けるのではなく、今後何をしたいのかを考えて更新していく必要がある。2020年に何かを始めるには今から開発を始めなければ間に合わないだろう。何をしたいのか、真剣に考えなければならない時期を迎えているのに、宇宙政策委員会はそれを考えないようにしている。

有人宇宙活動は、宇宙開発の中でも一般国民に最もよく知られ、親しまれているもののひとつだろう。費用的にも宇宙ステーション輸送機(HTV)関連を含めて毎年400億円を使っており、宇宙科学関係の250億円より多い。にもかかわらず、今後の方針を何も考えていない。このままでは日本の有人宇宙活動は、老朽化とともに消えてしまう。いや、それをこそ狙っているのではないか。

有人宇宙開発が自然消滅する

もちろん有人宇宙活動には、高い経費を払ってたいした成果を挙げていないという批判もある。有人宇宙活動自体を不要なものと考えて、現在の計画が終了したら有人宇宙活動そのものを終了するという選択肢もあり得るだろう。民間宇宙開発の発展を踏まえて、商業サービスの利用に軸足を移すのも有力な選択肢だ。しかし、そうするにしても政策決定は必要ではないのか。誰も「やめましょう」と責任を持って決定することないまま、JAXA職員や宇宙関連企業、そして宇宙飛行士や大学の研究者達に先の見えない仕事をさせるのか。それが日本政府の科学技術政策なのか。

折しも今、漫画「宇宙兄弟」がアニメや映画にもなって人気を博している。その舞台は2025年のJAXAだ。しかし現実のJAXAには、2025年には宇宙飛行士はいないかもしれないのだ。誰もその責任を負わないままに。